バリスカン造山運動(読み)バリスカンぞうざんうんどう(英語表記)Variscan orogenic movement

精選版 日本国語大辞典 「バリスカン造山運動」の意味・読み・例文・類語

バリスカン‐ぞうざんうんどう ‥ザウザンウンドウ【バリスカン造山運動】

〘名〙 (バリスカンはVariscan) 古生代後半石炭紀から二畳紀にかけて現在の中部ヨーロッパ中心に起こった造山運動ヘルシニア造山運動

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デジタル大辞泉 「バリスカン造山運動」の意味・読み・例文・類語

バリスカン‐ぞうざんうんどう〔‐ザウザンウンドウ〕【バリスカン造山運動】

ドイツザクセンに住んでいた民族名〈ラテン〉Varisciに由来古生代後期に中部ヨーロッパを中心にして起こった造山運動。これにより、イギリス南部からフランス・ドイツにわたる地域イベリア半島褶曲山脈ができた。ヘルシニア造山運動。

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改訂新版 世界大百科事典 「バリスカン造山運動」の意味・わかりやすい解説

バリスカン造山運動 (バリスカンぞうざんうんどう)
Variscan orogenic movement

古生代後期の造山運動。E.ジュースが《世界の顔Das Antlitz der Erde》(1888)の中で,ドイツ地域の古生代後期の褶曲山脈に〈バリスカン山脈〉と命名し,後にフランス地域のアルモリカン山地にまで拡張し,H.シュティレ(1924)以後広く世界各地の古生代後期の褶曲山脈を〈バリスカン造山帯〉とよぶようになった。バリスカンの名はドイツの古い民族バリスカーVariskerに由来する。バリスカン造山運動と同じ意味で,ヘルシニア造山運動Hercynian orogenic movementがイギリス,フランスなどで用いられるが,この名はドイツのハルツHarz山地に由来する。

 近年の研究では,バリスカン造山帯は古生代後期のユーラシア大陸と南方のゴンドワナ大陸との間に形成された東西方向の大造山帯で,中部ヨーロッパからアフリカ北部にわたり,現在の南北幅でも2000kmに及んでいる。西方延長は北アメリカのアパラチア造山帯へ,東方延長は中央アジアの天山~アルタイ大興安嶺造山帯からモンゴル地向斜を含み,さらにウラル山脈,オーストラリア東部から南極にも広がる。地球の歴史上最大の変動帯で,バリスカン造山運動が終わって大陸移動がおこったと考えられる。

 ヨーロッパ中部のバリスカン造山帯に伴われる変成岩類は3億~3.25億年前,花コウ岩は3億~3.5億年前の年代を示す。しかしエルツ山地,ボヘミア地塊などからは4.45億~4.8億年前のグラニュライト(高温変成岩)が発見され,バリスカン造山帯の深部に古期カレドニア変動があったことが最近判明し,カレドニア造山運動とバリスカン造山運動が重複していると考えられている。バリスカン造山帯には蛇紋岩や〈対をなす変成帯〉が発達しておらず,プレートテクトニクスのモデルが適用されにくいと考えられている。中国では天山,アルタイ,大興安嶺およびチベット北部にバリスカン造山運動と同時期の変動がある。また,日本における本州造山運動安倍族造山運動は,バリスカン造山運動に相当するといわれる。
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百科事典マイペディア 「バリスカン造山運動」の意味・わかりやすい解説

バリスカン造山運動【バリスカンぞうざんうんどう】

ヘルシニア造山運動とも。古生代後半に起こった世界各地の造山運動本州造山運動アパラチア変革などがこれに属するとされた。ヨーロッパではロンドン〜ベルリン〜ワルシャワを連ねる線より南,アルプス〜カルパティア山脈の北の中部ヨーロッパがその地帯にあたり,古生代中期に地向斜,多くの地域では石炭紀中ごろ,一部では後期に褶曲(しゅうきょく)と変成作用があった。
→関連項目イギリス石炭紀ペルム紀

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バリスカン造山運動」の意味・わかりやすい解説

バリスカン造山運動
バリスカンぞうざんうんどう
Variscan orogeny

古生代後期にヨーロッパに起こり,石炭紀からしだいに造山運動を受けて山脈化した一連の造山運動。バリスカン変動ともいう。この地域の南側は花崗岩の貫入や広域変成作用を受け,北側の地域は著しい褶曲運動を受けている。なおヨーロッパ全体の場合はヘルシニアン造山運動という言い方をよく用いる。また,バリスカン造山運動とほぼ同じ時期に世界各地でも著しい変動があった。ウラル山脈,天山山脈,アパラチア山脈などがその好例である。

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世界大百科事典(旧版)内のバリスカン造山運動の言及

【彗星】より

…太陽系を構成する天体の一つで,希薄なガスに包まれ,ときには長い尾を引いて,ほうきの形に見え〈ほうきぼし〉とも呼ばれる。“すい星のように……”とは,優れた人物がその社会に突然現れるときに使われる表現である。 何らの予告もなく,突然出現し,姿,形を変える大すい星の存在は太古から知られていて,日・月食などとともに人々の恐怖の的となり,迷信の対象となっていた。中国では古くからその字が示すようにすい星は天体であると考えられていたが,西洋ではアリストテレス以来,長い間すい星は虹や稲妻のように,地球大気内の現象だと思われていた。…

※「バリスカン造山運動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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