デボン(読み)でぼん(英語表記)Devon

翻訳|Devon

精選版 日本国語大辞典 「デボン」の意味・読み・例文・類語

デボン

(Devon)
[1] イギリス、イングランド西南部、コーンワル半島にある州。州都エクスター。旧称デボンシャー
[2] 〘名〙 ウシの一品種。(一)の原産毛色赤褐色。肉量を増加するための肥育性に富み肉質もよい。肉用・乳用・役用にする。日本には明治時代から輸入され、和牛改良に用いられた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「デボン」の意味・わかりやすい解説

デボン
Devon

イギリス,イングランド南西部にある州。地名は鉄器時代の住民ケルト系ドゥムノニイDumnonii族に由来する。面積6715km2は,ノース・ヨークシャー,カンブリア両州に次いでイングランド3位。人口は70万(2001)。州都エクセター。サウスウェスト半島の中央部を占め,北はブリストル海峡,南はイギリス海峡に臨み,東はサマセットとドーセット,西はコーンウォールの各州に接する。地質時代のデボン紀は,この地域を模式地とする。アルモリカン造山運動による東西方向の構造線を有し,北部に砂岩エクスムーアExmoor,南部に花コウ岩の貫入したダートムーアの二つの高原が突出する。しかし中部には石炭紀砂岩が開析された平野が広がり,気候は温暖湿潤な海洋性である。こうした自然のため,ヒースにおおわれる高原では粗放的牧羊が卓越するが,南部海岸では早期野菜,果樹の市場園芸および酪農肉牛(デボン種)放牧の地域が広がる。内陸側には伝統的な羊毛工業が残存する一方,プリマス,エクセターなどの港湾都市では造船をはじめとする近代工業が発展している。観光も重要な産業で,北部海岸にイルフラクーム,南部海岸にトーベイ,ペーントン,ブリクサムなどのリゾートが立地する。ダートムーア周辺にはドゥムノニイ族の要塞遺跡が多く,ローマ時代にはローマ道のフォス・ウェーFosse Wayの終点としてエクセターが建設された。その後はウェセックス王国に併合されるが,8世紀末に州として独立,デーン人の侵入のあと,1068年にウィリアム1世が平定した。中世から羊毛生産とダートムーアのスズ,銀,鉛の鉱業が盛んであったが,いずれも19世紀までに衰退した。エクスムーア,ダートムーアの両高原は国立公園に指定されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デボン」の意味・わかりやすい解説

デボン
でぼん
Devon

イギリス、イングランド南西部のカウンティ(県)。デボンシャーDevonshireともいう。面積6562平方キロメートル、人口70万4499(2001)。県都エクセター。1998年プリマス、トーベイの2地区がユニタリー・オーソリティー(一層制地方自治体)として分離した。コーンウォール半島の中央部を占め、主として古生代の石炭紀およびデボン紀の地質と花崗(かこう)岩からなる高原地形が発達する。地質時代区分の「デボン紀」は当地の地質にちなむ。北東部県境には標高約500メートルのイクスムア、南西部に標高約600メートルのダートムアの2丘陵が卓越し、ともに国立公園となっている。複雑な海岸線と温暖な気候に恵まれ、南のイギリス海峡側にはトーベイ、プリマスなどの海浜保養地が発展した。なお東デボン海岸は隣県のドーセットとともに、2001年、世界遺産の自然遺産として登録されている(世界自然遺産)。野菜、果物、花卉(かき)などの園芸農業や酪農が発達し、ロンドンやミッドランド方面に出荷される。織物・製紙・陶器工業もある。

[久保田武]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android