タールクダール(英語表記)Tā`alluqdār
Tālukdār

改訂新版 世界大百科事典 「タールクダール」の意味・わかりやすい解説

タールクダール
Tā`alluqdār
Tālukdār

ペルシア語の〈臣従従属〉を意味するta`alluqaと〈所有者〉を示す接尾辞dārの合成語。中世の北部インドでは,世襲的徴税役人や一定地域の徴税・行政司法権を強く保持した一種の〈領主〉層として活躍した。19世紀に入り,イギリス東インド会社政府による徴税制度の確立過程で,領主的権限は奪われ,しだいにベンガルザミーンダールZamīndārと同様の地主層へと転化していった。
ザミーンダーリー制度
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タールクダール」の意味・わかりやすい解説

タールクダール
ta`alluqdār; tālukdār

タールカ (領地) の持主を意味し,インドの封建的土地所有者の名称の一つ。地租徴収,治安維持などの任にあたった。ムガル帝国時代は,ザミーンダールと同様に,ムガル帝国に直属していた。ムガル帝国後期には,半独立的な政治権力に成長。ベンガルやアワドなどの地方では太守 (→ナワーブ ) の支配下にある中小領主層をタールクダールと称した。 1856年アワド地方がイギリスに編入されたことを一つの契機として,翌年勃発したインド大反乱では,一時,タールクダール層は反イギリス闘争を行なったが,のちイギリスに懐柔された。反乱終結後,イギリスの政策は彼らの諸権利を認め,彼らを植民地支配の柱として利用するものへと変った。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「タールクダール」の解説

タールクダール
tāluqdār

ペルシア語を語源とする言葉で,「タールカ」を持つものの意味。「タールカ」とは,臣従,転じてなんらかの権利を与えられた土地のこと。北インドのアワド地方では,ベンガルザミンダールにあたる大領主層をさした。彼らはイギリス支配に不満を持ち,シパーヒーの反乱を支持したが,反乱失敗後イギリスに懐柔され,イギリス支配の藩屏となった。ベンガルでは一般にザミンダールより小規模な領主層のことをさし,ザミンダールに従属している場合と,独立している場合の両方があった。アワドでもベンガルでも,植民地支配の確立とともに地主化した。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タールクダール」の意味・わかりやすい解説

タールクダール
たーるくだーる
Ta‘alluqdār/Tālukdār

ヒンディー語で土地所有者、地主を意味する。元来はアラビア語アラク(依存)を語源として、タールク(関係、税徴収対象地もしくは所有地)+ダール(をもつ者)の意味。北インド、アワド地方の彼らは大土地所有者として、インドの大反乱(1857)で反英に立ち上がり、鎮圧後は一転して対英協力者となった階層として知られる。

[長崎暢子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のタールクダールの言及

【地主】より

…これらヒンドゥー,ムスリムのジャーギールダールの中には,世襲化,在地化を強めて有力な土豪,領主となる者も現れた。また,インド北部,西部では17世紀以来,タールクダールと呼ばれる大土地所有者も存在したが,彼らは主としてラージプート族,ジャート,グージャルなどの上位カースト集団であり,パンジャーブ地方,西北部地方では彼ら有力カースト集団による同族的な共同所有村落(地主村落)を形成していた。
[南インド]
 南インドではチョーラ朝時代にすでにバラモンたちによって運営されるブラフマデーヤ村落が形成されていた。…

※「タールクダール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android