ゼネラル・エレクトリック(読み)ぜねらるえれくとりっく(英語表記)General Electric Co.

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ゼネラル・エレクトリック
ぜねらるえれくとりっく
General Electric Co.

アメリカの多角的企業。かつて世界最大の総合電機メーカーであったが、現在では金融サービス、航空機エンジン、医療システム、電力システム、放送家庭電器照明などを主要事業とする世界最大クラスの多角的企業である。1892年、エジソン・ゼネラル・エレクトリックトムソン・ヒューストン・エレクトリックの2社が合併してニューヨーク州法人として設立された。根幹となったエジソン・ゼネラル・エレクトリックは、1882年に発明王トーマス・エジソンに対するモルガン財閥の援助によってつくられた白熱電球製造会社であった。ゼネラル・エレクトリック(GE)となってからも、同社の事業の主体は白熱電球であり、1930年代にはアメリカ国内市場の60%を支配していた。

 GEは縦横に張り巡らされた特許権協定を通じて世界の電機産業を支配していた。名目的には国際電球カルテルのメンバーではなかったが、その子会社のGE・オブ・ニューヨークを通じて同カルテルの実質的指導者であった。すでに1929年当時、ドイツの主要電球メーカーのオスラムの株式の29%、オランダの総合電機会社フィリップスの17%を所有していたほか、世界の主要電機会社に巨額の対外投資を行っていた。日本に対しては、第二次世界大戦前は東京電気(東芝の前身)の40%を支配していた。第二次世界大戦後も東芝の株式の2%(1986)を所有する当時第8位の株主であったが、1997年(平成9)に株式を手放した。しかし、現在でも火力発電システムなどの重電部門で東芝とは提携関係にある。

 白熱電球からの利潤を他分野に投資することで、GEは総合電機メーカーとして世界的にもナンバー・ワンの地位を占めたが、コンピュータでIBMとの開発競争に敗れ、売上高でIBMの風下に立つことを余儀なくされた。また、1980年代初頭より、同社は日本企業の追い上げや不況による影響から競争力を失った。しかし、1981年に就任した会長兼CEO(最高経営責任者)のウェルチJack Welch(John Francis Welch Jr.、1935―2020)のもと大幅な人員の削減、激しい吸収・合併による業態の転換という方針でみごとに再生した。1985年末にはRCAを62億8000万ドルという石油産業を除くものとしては史上最高の金額で買収し、RCAの子会社である全国ネットの放送局NBCもGEの重要な一部門となった。傘下企業のなかでも、出資比率100%のGEキャピタルGeneral Electric Capital Services, Inc.(1932年設立)は世界最大のノンバンクとなり、GEの収益の中軸を担っている。1999年の売上高は1116億3000万ドル、純利益は107億1700万ドル。同年の部門別売上構成比率は、金融サービス50%、産業用機器・システム10%、発電システム9%、航空機エンジン9%、技術製品サービス6%、プラスチック6%、放送5%、家電5%。伝統的な家電以外の部門が90%以上を占め、かつての総合電機メーカーとしてのGEの面影はない。

[佐藤定幸・萩原伸次郎]

その後の動き

その後RCAは分割、売却され、NBCは2004年にビベンディ・ユニバーサル・エンターテインメントVivendi Universal Entertainment(フランスのビベンディ・ユニバーサルの娯楽部門で、映画会社の「ユニバーサル映画」が属する)と合併し、NBCユニバーサルNBC Universalを設立した(2009年にアメリカのケーブルテレビ事業者コムキャストに経営権が移り、2013年には同社の完全子会社となる)。GEの2012年の売上高は1473億5900万ドル、純利益は136億4100万ドル。

[編集部]

『ノエル・M・ティシー、ストラトフォード・シャーマン著、小林規一訳、小林陽太郎監訳『ジャック・ウェルチのGE革命――世界最強企業への選択』(1994・東洋経済新報社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ゼネラル・エレクトリック
General Electric Co.; GE

世界最大のアメリカ合衆国の総合電機メーカー。発明王トーマス・アルバ・エジソンの技術と金融王ジョン・ピアポント・モルガンの資金が結合し,19世紀末に誕生したエジソン・ゼネラル・エレクトリックが前身。1892年トムソン・ヒューストン・エレクトリックと合併して現社設立,白熱電球のメーカーとして出発した。その後多くの会社を買収,重電,弱電,宇宙開発機器,軍需,医療用機器など,まさに「人工ダイヤモンドから電動歯ブラシまで」を生産するほか,金融,放送などのサービスを提供する代表的な多産業会社となった。1963年フレッド・J.ボーチが社長に就任して以来,フランスのコンピュータ会社マシン・ブルなど多くの会社を買収して積極経営に転じたが,コンピュータ部門の赤字が累積し,1970年に同部門をハネウェル(→ハネウェル・インターナショナル)に売却。1986年 RCAを買収するとともに投資銀行キッダー・ピーボディ・グループも傘下に収め,放送,金融などサービス関連事業も手がけるようになった。日本にも子会社日本ゼネラル・エレクトリックを核に,多くの子会社,合弁会社を抱える。事業内容は航空宇宙,医療システム,金融サービス,放送,電機,照明,電力供給,情報サービスなど。

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