スポーツクライミング(読み)すぽーつくらいみんぐ(英語表記)sport climbing

デジタル大辞泉 「スポーツクライミング」の意味・読み・例文・類語

スポーツ‐クライミング(sport climbing)

突起物のついた人工壁(クライミングウォール)を登り、速度難易度・到達地点などを競うスポーツ。「ボルダリング」「リード」「スピード」の3種目がある。
[補説]フリークライミング競技にしたもの。2021年開催のオリンピック東京大会から新競技として採用

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スポーツクライミング」の意味・わかりやすい解説

スポーツクライミング
すぽーつくらいみんぐ
sport climbing

登山のロッククライミング(岩壁登攀(とうはん))で使われる登攀技術をもとにした競技の総称。国際競技大会における種目には、(1)リード競技、(2)ボルダリング競技、(3)スピード競技があり、クライミングウォール(人工壁)、クライミングホールド(ホールド)、確保器、ハーネスロープカラビナクイックドロー(両端にカラビナのついた短いロープ)などの設備や用具を使い、登攀技術を競う。国際統括団体は国際スポーツクライミング連盟International Federation of Sport Climbing(IFSC)で、日本では公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会Japan Mountaineering and Sport Climbing Association(JMSCA。2017年に日本山岳協会から改称)が統括する。IFSC公認の国際大会としては、ワールドカップ・シリーズ、世界選手権、世界ユース選手権が行われている。日本では、2008年(平成20)から国民体育大会(国体)の山岳競技として、ボルダリング競技が正式種目に加わった。国体の競技は、2人で1チームを編成し、リードとボルダリングの2種目でチームどうしが競う複合競技として行われている。日本ではスピード種目は普及していない。

 このような競技のほか、趣味として楽しむ運動に、人工の壁や岩を登るインドアクライミングやウォールクライミングがあり、これもスポーツクライミングとよぶことがある。2020年(令和2)2月時点で、国内の愛好者はおよそ60万人、全国にボルダリングジムが500か所以上ある。

[編集部 2020年3月18日]

リード競技lead climbing

リード専用に設計された高さ12メートル以上のオーバーハングの人工壁を利用し、クライマーは壁面の確保支点にロープをかけて安全を確保しながら、最高到達点を目ざして登る。選手は2人1組となり、1人はクライマーで、もう1人が地面でロープを確保する。クライマーが登攀ルートに沿って制限時間内に登った最高到達点によって順位が決定される。

[編集部 2016年9月16日]

ボルダリング競技bouldering

高さ5メートルほどのボルダリング専用の人工壁にホールドとよばれる突起がつけられており、選手はロープを使用せず、ホールドを手がかりや足がかりとしながら、制限時間内に登る。一つの壁にはボルダーとよばれる複数のルート(課題)が設定されており、時間内に完登(かんとう)したボルダーの数や、ホールドごとに設けられたボーナスポイントの獲得点数などによって順位が決定される。

[編集部 2016年9月16日]

スピード競技speed climbing

最上部からロープを垂らしたトップロープの状態の人工壁で行われる競技で、クライマーはトップロープによって安全が確保された状態で登る。予選は完登所要時間によって成績が決定され、上位16名が決勝ラウンドへ進出。決勝ラウンドは二人が同時に登り、先に到達したほうが勝者となり、最後まで勝ち残った二人で決勝を行う。人工壁には高さ10メートル競技用と15メートル競技用の2種類がある。

[編集部 2016年9月16日]

その後の動き

2019年に開催されたIFSCクライミング世界選手権大会では、男子複合およびボルダリング種目で楢崎智亜(ならさきともあ)(1996― )が優勝、女子複合およびボルダリング種目で野口啓代(のぐちあきよ)(1989― )が2位、女子リード種目で森秋彩(もりあい)(2003― )が3位となった。

 2020年のオリンピック・東京大会(2021年開催)では、開催都市が実施を提案する追加種目5競技18種目の1競技として、スポーツクライミングが初めて採用された。種目はリード、ボルダリング、スピードの複合種目で男女の2種目。東京・お台場(江東(こうとう)区)の青海(あおみ)アーバンスポーツパークで開催され、男子は楢崎智亜が4位、女子は野中生萌(のなかみほう)(1997― )が銀メダル、野口啓代が銅メダルを獲得した。

[編集部 2022年2月18日]

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知恵蔵 「スポーツクライミング」の解説

スポーツクライミング

突起物のついた人口壁を登るスポーツ。到達地点を争うリード、難易度を重視するボルダリング、速度を競うスピードの3種目がある。2016年8月3日にリオ・デ・ジャネイロで開催された国際オリンピック委員会(IOC)第129次総会において、20年に行われる東京オリンピック大会での追加競技となることが決定した。なおIOCに提案されたスポーツクライミングは、通常単種目として行われているリード、ボルダリング、スピードを全て行い、これら3種目の合計点で順位がつけられるものとなっている。
リードは12メートル以上の高さの壁を制限時間内にどこまで登ったか、どこで落ちたかを争う種目。ロープをルートの途中にあるクイックドローと呼ばれる引っかかりに掛けて、安全を確保しながら登っていく。スタートからゴールまで壁に固定されているいくつものホールド(人工石の突起物)に番号がつけられており、多くの番号のホールドに到達できた者を上位とする。安易にゴールに到達してしまうと競技にならないため、最後まで登りきるのが難しいルートが設定されている。
ボルダリングは5メートル以下の高さの壁に固定されているホールドに手や足を掛けて、ロープを使わずによじ登っていく種目。複数の課題(コース)が設定されており、制限時間内にいかに少ない回数でいくつの課題を完登できるかを争う。完登数が同じ場合は、それに要した回数の少ないものを上位とする。
スピードは15メートルの壁をいかに速くゴールまで登り切ることができるかを競う種目。壁、ホールド、ルートが共通の条件のもと、2人が同時にスタートする形がとられる。トップレベルの選手は、男子は5秒台、女子は7秒台で駆け登るスプリント種目である。
スポーツクライミングにおける日本人の成績は、14年、15年、16年と3年続けてボルダリングで国別ランキング1位となり、ワールドカップ個人年間ランキングでは、男子リードで3回、ボルダリングで1回、女子ボルダリングで4回1位を獲得している。16年のワールドカップボルダリング種目で年間1位を獲得した楢崎智亜は、16年9月にパリで行われた世界選手権男子ボルダリングで優勝を成し遂げた。世界選手権で日本人選手が優勝したのは初めてのことである。

(場野守泰 ライター/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini 「スポーツクライミング」の解説

スポーツクライミング

安全確保のため以外には道具を用いず、自分の手足の力だけで突起物が設置された人工壁や自然壁を登る競技。「フリークライミング(自由登攀)」とも呼ばれる。決められたルートや課題をルールに従って登るもので、ロープを使わず達成したコースの数を競う「ボルダリング」、ロープを使って到達点の高さを競う「リード」、ロープを使ってタイムを競う「スピード」の3種目がある。ワールドカップでは個別種目として扱われているが、世界選手権では3種目合計で争う複合部門も設けられている。2015年現在、20年に開催される東京五輪の追加種目として国際オリンピック委員会に提案されることが決定している。

(2015-10-1)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スポーツクライミング」の意味・わかりやすい解説

スポーツクライミング

フリークライミング」のページをご覧ください。

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