ザーサイ(読み)ざーさい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザーサイ」の意味・わかりやすい解説

ザーサイ
ざーさい / 搾菜
[学] Brassica juncea Czern. var. tumida Tsen et S.H.Lee
Brassica juncea Coss. var. bulbifera Mas.

アブラナ科(APG分類:アブラナ科)の一年草タカナの一系統で、ダイシンサイ(大心菜)ともいう。葉は巨大で長さ75センチメートル、幅45センチメートルになる。葉の付け根の部分と短縮茎が肉こぶ状に肥大し、直径8センチメートルほどになる。肥大部分を塩と調味料とで漬け、漬物のザーサイをつくる。中国四川(しせん)省東部や揚子江(ようすこう)沿岸でよく栽培される。かつては千葉県館山(たてやま)などでわずかに栽培されたが、いまでは栽培はほとんどなく、もっぱら中国から漬物を輸入している。

[星川清親 2020年11月13日]

食品

中国の漬物の一種で、チャーツァイともいう。中国四川省肥沃(ひよく)な土地は蔬菜(そさい)類の栽培に適し、香味のあるものが多く、とくに漬物など野菜の保存法に優れているが、ザーサイはその代表的なものとして有名である。

 作り方は、ダイシンサイの茎にできるこぶ状のものを、種々の香辛料を用いて漬け込む。赤茶色で、堅さは古い沢庵(たくあん)漬けくらいである。ぴりっとした強い辛味芳香、しゃきっとした歯ざわりのよさは、中国人に限らず、日本人にも非常に好まれている。

 中国とくに四川地方では、野菜の漬物を一般野菜同様に料理に用いることが多く、ザーサイもいわゆる漬物として飯や粥(かゆ)のときに食べるほか、冷菜(ロンツァイ)(前菜)、炒菜(チャオツァイ)、湯菜(タンツァイ)などにも使う。

[野村万千代 2020年11月13日]

炒搾菜(ザーサイの炒め物)

チャオチャーツァイと読む。せん切りにして少量の酒、しょうゆかたくり粉をまぶしておいた豚肉と、柔らかくもどして同じくせん切りにした干ししいたけ、斜め切りのネギを炒め、最後によく洗って細く切ったザーサイを加え、混ぜ合わせて器に盛る。

[野村万千代 2020年11月13日]

蒸肉絲湯(豚肉蒸しスープ)

チョンロースータンと読む。食卓に供する深鉢に、豚肉、シイタケタケノコなどをせん切りにして入れ、酒、塩、少量のしょうゆで味をととのえた熱いスープを加えて鉢ごと蒸し、汁が澄んできたら細切りのザーサイを加える。

 いずれも、ザーサイの歯ざわりと香味を失わぬよう、料理の仕上がり際に加えることがたいせつである。

[野村万千代 2020年11月13日]


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改訂新版 世界大百科事典 「ザーサイ」の意味・わかりやすい解説

ザーサイ (榨菜)
zhà cài

中国四川省を主産地とするカラシナの一種。また,これからつくる漬物をいう。四川省ではふつう9月に播種,12~3月ころまでに収穫する。栽培の歴史は新しく,記録にあらわれるのは清朝末期からである。四川省のほか浙江省,台湾その他で広く栽培される。漬物は肥大した地面に近い茎の部分(菜頭)を使用し,八角,ウイキョウ,トウガラシその他の香辛料と塩を加えて漬けこんだもので,大量に外国に輸出されている。一般に漬物は生食が主であるが,菜はいため物,煮物,スープ材料にも多用される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ザーサイ」の意味・わかりやすい解説

ザーサイ

中国名を搾菜 zha-caiという。中国の代表的漬物。高菜に似たからし菜の軸にできる瘤の部分を,唐辛子をきかせて塩漬にしたもの。四川省特産で四川漬ともいい,世界的に有名。独特の香りと辛味で食欲をそそる。また歯ざわりがよい。そのまま食べるほか,油炒め,スープなどに入れて用いる。

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栄養・生化学辞典 「ザーサイ」の解説

ザーサイ

 中国の代表的な漬け物.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のザーサイの言及

【カラシナ(芥子菜∥芥菜)】より

…また春先にとう立ちした花茎も柔らかく利用することができる。カラシナは東アジアで多くの品種が分化しており,ネカラシナ,キガラシ,セリフォン,銀糸芥(ぎんしかい),アザミナ,タカナ,多肉性タカナ,大心菜(だいしんさい)(ザーサイ)などが含まれる。芥子【平岡 達也】【新田 あや】 カラシナの野生種はセイヨウカラシナで,関東以西の都市近郊の河川敷や堤防を中心に帰化している。…

【漬物】より

…保存漬は貯蔵を目的とする漬物本来のもので,とくに長く貯蔵されたものは古漬,ひね漬とも呼ぶ。外国の漬物では朝鮮のキムチ,中国のザーサイ,インドのチャツネ,欧米のピクルスザウアークラウトなどが知られている。
【日本の漬物】
 記録上は天平年間(729‐749)の木簡に見えるウリ,アオナなどの塩漬が古く,以後平安期まで塩漬のほかに醬(ひしお)漬,未醬漬,糟(かす)漬,酢漬,酢糟漬,甘漬,葅(にらぎ),須須保利(すずほり),荏裹(えづつみ)などの種類が見られる。…

※「ザーサイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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