ゴールド・ラッシュ(読み)ごーるどらっしゅ(英語表記)gold rush

翻訳|gold rush

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゴールド・ラッシュ」の意味・わかりやすい解説

ゴールド・ラッシュ
gold rush

新たに発見された金鉱(→金山)や金の採掘地に人々が殺到する現象。19世紀にアメリカ合衆国,オーストラリアカナダ南アフリカ共和国で起こった。
(1) 1848年1月24日,アメリカ,カリフォルニアサクラメント川付近(→サクラメント)にあるジョン・オーガスタス・サッターの所有地で,大工のジェームズ・ウィルソン・マーシャルが金を発見した。この報はまたたく間に世界中に伝わり,翌 1849年にかけて全世界からカリフォルニアに約 8万人が移住した。この大勢の移住者はフォーティー=ナイナーズ forty-ninersと呼ばれ,カリフォルニアの農業,鉱業,経済の急速な開発を促した。1853年までにカリフォルニアの人口は約 25万人にまでふくれあがった。ゴールドラッシュによる発展も一因となり,カリフォルニアは 1850年9月にアメリカの一州に加えられた(→1850年の妥協カリフォルニア州)。最も有名なゴールド・ラッシュ。以後も北アメリカでは 1859~60年にアメリカのバージニアシティー(→ネバダ州)で,1850年代後半および 1890年代にクリップルクリーク(→コロラド州)で,1896年にカナダのクロンダイク(→ユーコン准州)で,それぞれ小規模のゴールド・ラッシュが起こった。
(2) 1851年,オーストラリアのバララトベンディゴで金鉱が発見され,1860年代初頭にかけてオーストラリアとイギリス中から人が集まった。北アメリカの金が砂金状であるのに対して大きなものが多く,重さ 75kg以上の「ホルタマン金塊」が知られる。
(3) 1886年,南アフリカトランスバール地区のウィットウォーターズランドで,キンバリーのダイヤモンド採掘員ジョージ・ハリソンが金鉱を発見した。ほかの地域がゴールド・ラッシュから数年ののちにはすたれていったのと異なり,南アフリカの金採掘業はこれ以降,着実に発展を遂げ,世界有数の金生産地となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴールド・ラッシュ」の意味・わかりやすい解説

ゴールド・ラッシュ
ごーるどらっしゅ
gold rush

金の発見地、採掘地に向かって大ぜいの人が急激に集中するありさまをいう。史上もっとも著名なゴールド・ラッシュは、1848年に始まるアメリカ、カリフォルニアのそれである。同年1月にサクラメントに近いアメリカ川でジェームズ・W・マーシャルという大工が砂金の粒をみつけたというニュースは、またたくまに全世界に広まった。まもなく、全米および中国、オーストラリアを含む世界の各地から、わずかな資本で一攫千金(いっかくせんきん)を夢みる金鉱探したちや、彼らに必要な物資・サービスを提供する商人、職人、ホテル業者、銀行家、弁護士、売春婦たちがカリフォルニアに押し寄せ始めた。この大ぜいの人たちは一般に「1849年の人々(フォーティ・ナイナーズ)」とよばれた。1848年初め2万に満たなかったカリフォルニアの人口は、49年に10万、52年に25万、60年には38万とうなぎ登りに増加、鉱山町各所につくられた。1852年には最高の年間金産出量を記録し、その額は約8130万ドルと推定されている。また、1847年には100人そこそこの僻村(へきそん)にすぎなかったサンフランシスコは、カリフォルニアへの入口、物資補給基地、歓楽街として金探しブームの中心地となり、50年に人口3万5000の都会へと成長した。アメリカではこのあと、ネバダのコムストック鉱脈の発見(1859)、コロラド(1859)、モンタナ(1863)のラッシュと続き、1897年には北アメリカ最後のゴールド・ラッシュがアラスカユーコン川流域におこっている。

 アメリカ以外のゴールド・ラッシュでは、オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズビクトリア(1851)、同じくクールガーディ(1864)、そして1886年に南アフリカ、トランスバールのウィトワーテルスランドの巨大な金鉱脈の発見によるものが有名。

平野 孝]

『中屋健一著『アメリカ西部開拓史』(1963・筑摩書房)』『猿谷要著『西部開拓史』(岩波新書)』

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ゴールド・ラッシュ」の解説

ゴールド・ラッシュ
Gold Rush

金鉱が発見された土地に急激に人口が集中する現象。1849年のカリフォルニア,51年のオーストラリアのヴィクトリア,59年のコロラド,84年の南アフリカのトランスヴァールなどが有名。特にカリフォルニアのゴールド・ラッシュは最大のもので,48年に金鉱が発見され,その知らせが伝わると,翌年1年間だけで8万人以上の人々が押しかけた。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

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