クーロン(Charles Augustin de Coulomb)(読み)くーろん(英語表記)Charles Augustin de Coulomb

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

クーロン(Charles Augustin de Coulomb)
くーろん
Charles Augustin de Coulomb
(1736―1806)

フランスの土木工学者、物理学者。フランス南西部のアングレームに生まれる。工兵学校で力学理論や工学技術を修得したのち、1761年工兵隊に入り、要塞(ようさい)、運河港湾の建設などを指導した。フランス領西インド諸島にも8年間勤務した。1782年、健康を害して帰国してからは、橋梁(きょうりょう)建設技術などとの関連で摩擦の研究に進み、アモントンの成果を受け継いで、摩擦に関するクーロン法則を明らかにした。しかも、平面の相対運動による摩擦だけでなく、転がりの摩擦やピボット軸受の摩擦についても研究した。また、真鍮(しんちゅう)や鉄などの細い金属線におもりをつけてつるし、細線をねじったときの復原力による振動を利用して、ねじれ弾性についても研究した。彼が電気・磁気に関するクーロンの法則を実験的に示すときには、このときの装置(ねじり秤(ばかり))と研究成果が利用された。まず、同符号の電荷の反発力(斥力)でねじり秤の金属線をねじり、そのときの金属線の復原力と電荷間の距離との関係を調べることによって、電荷間の斥力が距離の2乗に反比例することを示した(1785)。しかし、異符号の電荷(引力)の場合には、ねじり秤の静力学的つり合いを用いたこの方法ではうまく実験できなかった。そこで、引力によって回転振動を生じさせ、その減衰度(振動の持続時間)から引力の大きさを求めるという動力学的な方法を採用した。このようにして、電気・磁気の引力・斥力がすべて距離の2乗に反比例することを実験的に示すことに成功した(1787)。ただし、電荷・磁荷の引力・斥力が逆二乗則に従うというのは、クーロン以前に、プリーストリーキャベンディッシュも抱いていた考えであって、クーロンの独自性は、その逆二乗則を精確な定量的実験によって示した点にある。また理論の面においても、電気・磁気について遠隔作用説をとり、当時フランスで支配的であったデカルト流の渦動論に対立していた。とはいえ、彼のこれら定量的な研究を基礎に、ポアソンガウスグリーンらがポテンシャル論という数学的理論を発展させていったことにみられるように、定量的な静電磁気学の発展の端緒を切り開いた彼の功績は、高く評価される。

[杉山滋郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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