クライド川(読み)クライドがわ(英語表記)River Clyde

改訂新版 世界大百科事典 「クライド川」の意味・わかりやすい解説

クライド[川]
River Clyde

イギリス,スコットランド地方南西部のストラスクライド州を流れる,同地方で最も重要な河川。クライドとはゲーリック語で〈岩の丘〉の意。ローマ時代にはクロッタ川と呼ばれた。全長170km,流域面積3836km2。南部高地のダー湖を水源とし,上流はかつてトウィード川の支流であった。中流部のラナーク付近にはクライド滝と呼ばれる四つの滝があり,その水力は産業革命初期に綿工業に利用された。またハミルトンに至るクライド谷は,果樹栽培や温室園芸,馬飼育の集約的農業が盛んである。グラスゴー,ハミルトンを中心とする下流域は,炭田を背景に鉄鋼造船などの重工業の発達が著しく,スコットランド最大の工業地帯を形成している。河口クライド湾からグラスゴーまでは外洋船の航行が可能であり,また河口部のボウリングから東海岸のフォース湾までは,1790年に完成したフォース・クライド運河が通じている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クライド川」の意味・わかりやすい解説

クライド川
クライドがわ
River Clyde

イギリススコットランド南西部を流れる川。全長約 170km。サザン高地に源を発し,約 50kmにわたって北流したのち,ビガー付近から北西,南西,北西と大きく方向を転じながら流れ,ラナーク付近で旧赤色砂岩層を切って抜け,クライド谷と呼ばれる広い谷に出る。これより下流は河口まで北西ないし西北西に流路をとり,初め果樹園やイチゴ畑が広がる肥沃な農業地帯で輓馬クライズデール種の産地としても知られるクライド谷を,次いでハミルトン付近から炭鉱・重工業地域を流れ,グラスゴーの市街を貫流したのち,ダンバートンの下流でクライド湾となり,大西洋に出る。18世紀初め頃まではグラスゴー橋の下流に浅瀬があったが,その後水路浚渫(しゅんせつ)が進み,グラスゴーの中心部まで外洋船が遡航できるようになった。これに伴ってグラスゴーは急速に大工業都市,世界最大の造船中心地へと発展した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クライド川」の意味・わかりやすい解説

クライド川
くらいどがわ
Clyde

イギリス、スコットランド南部を流れる川。全長170キロメートル、流域面積3836平方キロメートル。ラナークシャー旧県の南端に源を発し、ラナーク、ハミルトン、グラスゴーを通り、クライド湾に注ぐ。上流部には滝や急流がみられ、これらの水力はかつて綿織物工業の発展に寄与した。ラナークから下流域は、スコットランドでもっとも肥沃(ひよく)な平野で、果樹園が多い。グラスゴーまでは外洋船の航行が可能で、グラスゴーを中心とする重工業地帯の形成に大きな役割を果たした。しかし諸施設が老朽化し、現在は多くの失業者を抱える不況地帯となっている。

[小池一之]

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世界大百科事典(旧版)内のクライド川の言及

【イギリス】より

…農業では少雨の東部が穀物栽培に,湿潤な西部が酪農,牧羊に重点をおいている。また鉱工業もエアシャー,ファイフ州などの炭田を背景に発展し,グラスゴーを核とするクライド川流域Clydesideには鉄鋼・造船などの重工業が集中している。これに対し古都エジンバラは,軽工業や金融業に特色を有する文化都市である。…

※「クライド川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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