キイロショウジョウバエ(読み)きいろしょうじょうばえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キイロショウジョウバエ」の意味・わかりやすい解説

キイロショウジョウバエ
きいろしょうじょうばえ / 黄色猩々蠅
[学] Drosophira melanogaster

昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ハエショウジョウバエ科に属する昆虫。この科の昆虫は、体長、翅長とも2~2.5ミリメートルで、体は黄褐色。野生種の複眼は、生時は赤色なので、アカメともよばれる。触角は短いが、触角刺毛は長い羽毛状で、背方には5本、下方には3本の分枝がある。胸部背面にはやや光沢があり、黒色の短い微毛が多い。はねは透明で斑紋(はんもん)はない。前脚第1跗節(ふせつ)の末端には、雄では約10個の黒色の剛毛よりなる性櫛(せいしつ)をもつ。腹部背面各節の後縁には黒褐色の横帯があり、その幅は後方の節のものほど太くなる。成虫は過熟の果物、ぬかみそ酒類などの発酵物に集まり、幼虫は酵母菌を食べて生育する。人家の付近や醸造工場の付近に多い。飼育が簡単で、環境条件がよければ年間に25~30回もの累代飼育が可能である。染色体数が8個と少なく、巨大な唾液腺(だえきせん)染色体もみられるほか、諸種の形質の発現が顕著であるため、遺伝学の研究や学習の好材料として用いられている。

[伊藤修四郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キイロショウジョウバエ」の意味・わかりやすい解説

キイロショウジョウバエ
Drosophila melanogaster

双翅目ショウジョウバエ科。体長2~2.5mm。体は黄褐色。世界中に広く分布するショウジョウバエの1種で,現代生物学を語るうえで欠かせない実験材料。 1910年に T. H.モーガン白眼ハエを発見して以来,さまざまな突然変異が見つかり,飼育のしやすさ,交配の容易さもあって古典的遺伝学の発展に大きく貢献した。また 70年代以降の分子生物学の隆盛とともに,高等動物神経や発生の仕組みを,分子のレベルで理解するための中心的なモデル動物として広く使われ,多大な成果をあげている。 (→遺伝学 )

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世界大百科事典(旧版)内のキイロショウジョウバエの言及

【ショウジョウバエ(猩々蠅)】より

…世界で2000種以上,日本からは,16属二百数十種の記録がある。これらのうちでもっとも有名なのがキイロショウジョウバエDrosophila melanogaster(イラスト)である。本種は,世界中に分布し,家屋内にも多く,遺伝学の実験材料として広く用いられ,染色体地図が作成されている。…

【性染色体】より

…この型においては成熟分裂(減数分裂)の結果,雌ではXのみ,雄ではXまたはYをもつ2種類の生殖細胞が形成される。この型の性決定様式をXY型とよび,キイロショウジョウバエ,ヒト,アサなどの場合がその典型的な例である。ヒトでは女は44A+XX,男は44A+XY(Aは常染色体を示す)で表される。…

※「キイロショウジョウバエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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