カジメ(読み)かじめ

改訂新版 世界大百科事典 「カジメ」の意味・わかりやすい解説

カジメ (搗布)
Ecklonia cava Kjellm.

日本の温帯海域に近縁アラメとともに大きな海中林をつくるコンブ科の褐藻。1年目の体は単葉で,幅の広いササの葉を思わせるが,2年目以降の体の葉状部は規則正しく左右に側葉を出し,羽をひろげた形となり,外見上,根,茎,葉の区別が明瞭となる。体の高さは生育場所によって異なり,一般に浅所では低く1mくらいであるが,深所では高く3mくらいになる。低潮線付近から10mくらいの深さの海底に大きい群落をつくって生育する。本州太平洋(関東以南),四国,九州および朝鮮半島沿岸等に分布する。似た海藻のアラメは茎の先端が二叉(にさ)分枝するので区別できる。また両種は生育深度も異なる傾向があり,浅所にはアラメが多い。日本海特産のカジメ属にツルアラメE.stolonifera Okam.がある。この海藻は根部をつる状にのばし,そのところどころから直立する葉状部を出す。佐渡では板あらめとして食用にする。カジメ,アラメともにアルギン酸原料になる。海中林は魚貝類のよい生息場になり,アワビの肉1kgの増量にはカジメ約15kgを食べることが知られ,またこのカジメの量は発達した海中林の約1m2当りの現存量に相当する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カジメ」の意味・わかりやすい解説

カジメ
かじめ / 搗布
[学] Ecklonia cava Kjellman

褐藻植物、コンブ目の海藻。一名ノロカジメ。地方によってはアマタともよぶ。下方は1本の細ステッキ状の茎となり、茎の上方は、帯状で肉厚、扁平(へんぺい)な中央葉片と、その左右両縁に十数枚の側葉片からなる葉部をもつ大形の多年生藻。黒褐色を呈し、茎の長さ1メートル以上、全体長2メートル内外になるものも多い。葉部は全面しわがなく平滑であること、また、茎の上部が二叉に分かれないことが特徴。カジメによく似ているが葉面にしわのあるのはクロメE. kuromeといい別種。また、茎の上部が二叉に分かれ、葉面にしわのあるのはアラメで別属。これら3種は、だいたい似たような分布域、生育層をもつ温海性海藻であるが、分布域ではアラメがいちばん広く、岩手県南部まで北上する。一方、カジメは福島県南部止まりで、紀伊半島以西ではカジメよりもクロメが多産するようになる。カジメは多年生藻のため、1年を通じて生育する。とくに春から夏にかけて繁茂し、秋から初冬胞子を出す。ホンダワラ類とともに藻場(もば)の主要構成藻であり、アワビやサザエなどの主要餌料(じりょう)となる。なおカジメは、カリウムヨード、アルギン酸の含有が多く、その製造原料ともなる。カジメは昔から食用にされたといわれているが、現今では、幼体を食用にする地方は多いが、成体を食用にする地方はまれで、味もアラメやクロメに比べて劣る。

[新崎盛敏]


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百科事典マイペディア 「カジメ」の意味・わかりやすい解説

カジメ

ノロカジメとも。褐藻類コンブ科の多年生海藻。本州中部以南の太平洋沿岸に分布。低潮線付近から約15mの海底にアラメとともに大きい群落(海中林)をつくり,アラメよりやや深い所にはえる。体はアラメのようにふたまたに分かれることがなく,中央の厚い部分から羽状に葉片が出る。高さ1〜2m。ヨウ素やアルギン酸の原料。またこれらの海中林は魚介類の生育場所として,水産上重要である。

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