カグー(英語表記)kagu
Rhynochetus jubatus

デジタル大辞泉 「カグー」の意味・読み・例文・類語

カグー(kagu)

ジャノメドリ目カグー科の鳥。全長55~60センチ。全身灰白色冠羽が目立つ。翼をもつが飛行能力はほとんどなく、森林で地上小動物をとって食べる。ニューカレドニア固有種

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改訂新版 世界大百科事典 「カグー」の意味・わかりやすい解説

カグー
kagu
Rhynochetus jubatus

ツル目カグー科の鳥。この科はニューカレドニア島特産の1種だけからなる。この鳥は現在絶滅の危機にあり,国際保護鳥に指定されている。類縁関係は明らかでないが,この科にいちばん近いのは南アメリカに分布するジャノメドリ科と考えられている。全長約60cm。雌雄は同大同色。全身ほぼ灰白色,初列風切には数本の黒と白の横帯がある。くちばしと脚は橙黄色,虹彩は赤。後頭に房状の冠羽があり,外観はサギ類に似ている。カグーは1852年に初めてこの島に定住したフランス人によって発見され,60年に新種として記載された。そのころはこの鳥は平地の湿地や森林にふつうに生息していたらしいが,現在では南部の山地の森林にごく少数が生き残っているにすぎない。食物は陸生の大型の貝類や地上にいるさまざまな小動物である。翼は体の大きさに比較して決して小さくないが,ほとんど飛行力はない。黒と白の横帯が目だつ翼はディスプレーに使われる。飼育すると比較的人になれやすく,20~30年も生きる。野生のものの繁殖はわかっていないが,飼育下では地上に小枝を重ねて営巣し,1卵を産んで繁殖する。抱卵日数は35~40日。1944-45年にこの島に滞在していたアメリカの鳥類学者によると,カグーを絶滅直前まで追いやった原因は,森林とニッケル資源の開発に伴って生じた森林の伐採とカグーの生息環境の破壊,人間とともに入りこんだイヌネコブタ,ネズミ類の野生化による成鳥,雛,卵の捕食害,美しい羽毛を売物にするための乱獲などであるという。飛ぶ能力のないことも乱獲された一因であると考えられる。カグーという名はメラネシア人による呼名である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カグー」の意味・わかりやすい解説

カグー
かぐー
kagu
[学] Rhynochetos jubatus

鳥綱ツル目カグー科の鳥。この科Rhynochetidaeはカグー1種だけからなる。全長約56センチメートル。背面はスレート灰色で、後頭に房状の冠羽があり、腹は薄い灰色である。翼には黒、白、栗(くり)色の横帯があるが、この横帯は、翼を広げてディスプレーするときだけ目だつ。嘴(くちばし)と足は橙赤(とうせき)色。ニューカレドニア島の特産で、島の奥地の深い森林にすむ。カグーの名は、原住民の呼び名(彼らはこの鳥の声から名づけた)に由来する。幅広い大きな翼があるが、飛ぶことはほとんどなく、もっぱら地上で生活し、夜間活動する。その大きな声は遠くまで聞こえるが、野生のものの姿を見た人は非常に少ない。食物は主として地上と土中の昆虫類、小動物、ミミズなどで、プラコスティルス属Placostylusの巻き貝をとくに好むといわれる。野生の鳥の繁殖はまだわかっていないが、飼育下では地上に小枝と葉を集めて巣をつくり、灰色と褐色の斑(ふ)のあるクリーム色の卵を1個産む。抱卵と育雛(いくすう)は雌雄交代で行う。この鳥は、かつては食用にされるほど多くいたが、森林の伐採とイヌやネコなどの天敵の移入で急激に減少し、現在では絶滅のおそれのある鳥の一つとして、国際保護鳥に指定されている。

[森岡弘之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カグー」の意味・わかりやすい解説

カグー
Rhynochetos jubatus; kagu

ジャノメドリ目カグー科。全長 55~60cm。1科 1属 1種。分類についてはまだ不明な点もある。かつてはツル目に置かれていた。全身ほぼ青灰色で,には白色と黒色の横帯がある。眼が赤く,やや長い橙赤色のと脚をもつ。頭上には後方に伸びる冠羽(→羽冠)があり,威嚇やディスプレイの際に立てる。ニューカレドニア島にのみ分布する。深い森林にすみ,おもに夜間活動する。飛翔力はほとんどなく,地上でミミズ,昆虫類,カタツムリなどをとる。1900年代の初めに,島の開発によって生息数が激減し,今日では,絶滅のおそれがあるため保護政策がとられている。ワシントン条約附属書I適用鳥。

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