アセトフェノン(読み)あせとふぇのん(英語表記)acetophenone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセトフェノン」の意味・わかりやすい解説

アセトフェノン
あせとふぇのん
acetophenone

芳香族ケトンの一つ。メチルフェニルケトン、アセチルベンゼンともいう。天然にはラブダナム油やウミダヌキ香に含まれている。

 ベンゼンと塩化アセチルとのフリーデル‐クラフツ反応により合成する。天然物から分離するには、蒸留したのち結晶化させる。独特の甘い芳香をもつ無色液体で、冷却すると固化する。水にはほとんど溶けないが、エタノールエチルアルコール)、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。濃硫酸と接触させると橙黄(とうこう)色となる。アルカリハロゲンを反応させるとハロホルムCHX3(Xはハロゲン)と安息香酸C6H5COOHを生成する(ハロホルム反応)。香料製造の原料に用いられる。以前はヒプノンの名で催眠剤に用いた。

[廣田 穰]

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改訂新版 世界大百科事典 「アセトフェノン」の意味・わかりやすい解説

アセトフェノン
acetophenone


メチルフェニルケトンともいう。代表的芳香族ケトンの一つ。融点19.65℃,沸点202℃。特有の芳香をもつ無色の液体で,冷やすと無色の板状結晶となる。塩化アルミニウムの存在下でベンゼンに塩化アセチルを作用させて合成する。現在工業的用途はほとんどなく,有機合成に利用されている。ヒドロキシルアミンと反応し,アセトフェノンオキシムを生成する。これは酸の作用により,ベックマン転位を起こしアセトアニリドになる。またアセトフェノンの塩素化によって得られるω-クロロアセトフェノンは,皮膚を刺激し,とくに催涙性があるので,催涙ガスとして用いられたこともある。
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化学辞典 第2版 「アセトフェノン」の解説

アセトフェノン
アセトフェノン
acetophenone

1-phenylethanone.C8N8O(120.14),C6H5COCH3.天然には,ラブダナム油やウミダヌキ香などのなかに存在する.ベンゼンに塩化アセチルをフリーデル-クラフツ縮合させてつくられる.芳香をもつ液体.融点20 ℃,沸点202 ℃(100 kPa).1.0329.1.5363.エタノール,クロロホルム,エーテルなどに可溶,水に不溶.酸化すれば安息香酸を生じる.香料工業において,そのままあるいは中間体として用いられる.LD50 900 mg/kg(ラット,経口).[CAS 98-86-2]

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栄養・生化学辞典 「アセトフェノン」の解説

アセトフェノン

 C8H8O (mw120.15).

 ナッツ,タバコ,飲料,アイスクリーム,キャンディー,その他多くの食品に香料として使われる.イチゴや茶などの天然物にも少量含まれている.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アセトフェノン」の意味・わかりやすい解説

アセトフェノン
acetophenone

フェニルメチルケトンともいう。化学式 C6H5COCH3 。ベンゼンと塩化アセチルから合成される。芳香をもつ無色の物質。融点 20℃,沸点 202℃。水にわずかに溶け,アルコール,エーテルなどによく溶ける。香料,合成原料に用いられる。

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百科事典マイペディア 「アセトフェノン」の意味・わかりやすい解説

アセトフェノン

化学式はC6H5COCH3。特有の芳香のある無色の液体。融点19.65℃,沸点202℃。水に微溶。有機溶媒に可溶。香料その他の薬品の製造原料。ベンゼンと塩化アセチルを無水塩化アルミニウムを触媒とし反応させると得られる。(図)

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