アジア人追放事件[ウガンダ](読み)アジアじんついほうじけん[ウガンダ]

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

アジア人追放事件[ウガンダ]
アジアじんついほうじけん[ウガンダ]

ウガンダの I.アミン大統領が,1972年8月5日,経済をアフリカ人化する政策一環として,ウガンダに在住する約8万人のアジア人 (主としてインド=パキスタン系住民) に対し,90日以内に国外に退去するよう突如要求した事件。当初はウガンダ国籍をもつアジア人までもが対象とされたが,8月 22日に撤回され,追放令の適用範囲は外国籍 (主としてイギリス国籍) アジア人に限定されることになった。この結果イギリスへ2万 3840人,インドへ 6000人,カナダへ 6000人,パキスタンへ 1000人,アメリカへ 1000人,各地の国連難民センターへ 4000人,総計4万 1840人のアジア人がウガンダから出国,収容され,追放令最終期限の 11月8日の時点では,800人を残すのみとなった。アミン政権は外国籍アジア人の追放と並行して,ウガンダ人によるアジア人企業の買収を奨励した。このためアジア人企業の大部分操業を停止,対外貿易の低下,輸入の減少,物価の上昇が起り,大量の失業者が出た。この事件は 70年代に全アフリカ的規模で著しく高まった経済のアフリカ人化政策の一種であるだけに,他のアフリカ諸国はほぼ静観する態度をとったが,タンザニアの J.ニエレレ大統領のように,これを「逆人種主義」として非難する声もあった。

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