うねり(読み)ウネリ

精選版 日本国語大辞典 「うねり」の意味・読み・例文・類語

うねり

〘名〙
① (動詞「うねる」の連用形名詞化) ゆるく曲りくねること。また、曲りくねっている状態
南方録(17C後)墨引「雷盆と云は、〈略〉丸き御盆也。せがい花形のごとくうねりあり」
② 大きく起伏する海の波。波長、および、周期が長く、波の山がまるい、海面の起伏。低気圧や台風によって起こる。
洒落本・仕懸文庫(1791)一「けふもよっぽど南がでてきたはへ、でへぶうねりがある」
③ 米の相場が、少しずつ上がったり下がったりすること。〔大坂繁花風土記(1814)〕

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デジタル大辞泉 「うねり」の意味・読み・例文・類語

うねり

緩く曲がりくねること。「うねりを打つ」
大きく起伏する海の波。波長が長く、波の山が丸い波。低気圧や台風のときに発生。「うねりが高くなる」
[補説]「時代のうねり」などのように比喩的にも用いる。
[類語]波浪さざ波白波逆波津波土用波小波大波高波荒波波濤怒濤激浪男波女波余波徒波あだなみ逆浪げきろう横波海嘯夕波波頭なみがしら波頭はとう波の花波間

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改訂新版 世界大百科事典 「うねり」の意味・わかりやすい解説

うねり
swell

波浪は,風からエネルギーを供給されて発達中の風浪と,その供給を断たれて減衰過程にあるうねりとに分けられる。うねりは風浪にくらべて,峰線の長いなめらかな波面をもつ規則的な波で,多くは波長約100m以上,周期約8秒以上と長く,また波長,周期が長いものほど減衰に時間がかかる。風がやんだり,風域外へ伝播して,風から波へのエネルギー供給がなくなると,風浪はその中の短い周期成分,すなわち短波長成分から減衰を始める。減衰は水の粘性や空気の抵抗のほかに流体運動の非線形作用によって起こる。非線形作用は短波長の波を長波長の波に変える効果があるので,短波長の波ほど急速に消える一方,長い波長の波ほど,より短い波長の波のエネルギーを吸収して最後まで残る。うねりの特徴はこのような理由で現れると考えられている。実際に南太平洋の暴風圏を源とするうねりが赤道を越え,はるかアラスカの沿岸に到達したり,赤道付近にある台風域で発生したうねりが土用波として日本の沿岸にうち寄せるように,暴風域で成長した波長数百mの巨大な波浪は,うねりとして1万km以上の遠方まで伝わることが知られている。またうねりは多くの場合,数分間の周期でその波高が大きく変化するビート現象を伴う。これは周期がわずかに異なる二つのうねりが重なり合うことによって生じるもので,暴風圏の外で現れる予想外の高波の多くは,これによるものと考えられる。このようにうねりは減衰過程にあるといっても,その持続性,広域伝播性から,多くの波浪災害に関係しており,航海の安全や沿岸防災上から決して軽視できない。気象庁ではうねりを表のような階級に分けて観測している。
波浪 →風浪
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「うねり」の意味・わかりやすい解説

うねり
swell

風が、ある程度広い海域をある程度長く吹き続けると風浪が発達する。発達した風浪は風を吹かせた低気圧よりも速く進むので、やがて風が吹く海域の外に出る。外に出ると周期も波長も長くなる。これがうねりである。風浪もうねりもさまざまな周期・波長を含んでおり、風速と発達の度合によるが、卓越する周期と波長は風浪で6秒前後、数十メートルであり、うねりでは11秒前後、200メートルくらいである。海水の摩擦の効果は弱いので、うねりは非常に遠くまで伝播(でんぱ)する。南方洋上の台風の暴風域で発達した風浪がうねりとなって、日本に到達するのが土用波である。風浪・うねりの高さ・周期の予報法は第二次世界大戦中に著しく進歩した。予報の精度は上陸作戦の成否にかかわるからである。

[高野健三]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「うねり」の意味・わかりやすい解説

うねり
swell

海の波には風が吹いたときみえる風浪のほか,その場所の風に直接関係のない波がある。後者をうねりといい,風がないときの波や暴風の余波,土用波などがこれにあたる。うねりは風浪に比べて,周期も波長も長く,波の背が丸くなっているが,風浪と見分けにくいこともある。うねりでは波長が数百m,周期が 20秒以上のものがある。暴風域では風浪が起るが,風がやんだのちも波高と波長の比が 0.02内外の波が残ってうねりとなり,遠くまで伝播される。うねりの進行速度は台風などの暴風よりも速いので,南方に台風が発生すると,日本近海はまだ風がないのに大きなうねりが太平洋岸に押寄せる。8,9月の土用波がこの例で,台風の前ぶれとなる。うねりは無風の海面に現れ,船舶を悩ましたり,海岸構造物に被害を与えることがあるが,うねりの予報は風浪よりもむずかしい。

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百科事典マイペディア 「うねり」の意味・わかりやすい解説

うねり

その場所・その時の風で直接起こされたものではない波。風浪が発生域を離れて他の海域に到達したものや,風が静まった後も残っている波などがそれに相当する。波頭が丸みを帯びていて,周期が長い(短くても5〜6秒,長ければ20秒にも達する)ので風浪と区別できる。波長は長く数百mに達する。
→関連項目磯波土用波波浪

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海の事典 「うねり」の解説

うねり

風浪が発生域を離れるなどして、風の直接の影響を受けなくなった状態の波をうねりと言う。風浪が尖った峰を持ち、複雑な形状をしているのに対し、うねりは 周期も比較的長く、丸みをおびた峰を持ち、峰線も長く続き規則的である。これは発生域を離れる際に波が成分波の間の非線形相互作用によって、短周期成分を 失いスペクトル幅も狭くなることによる。うねりの形になった波は大洋をほとんど減衰することなく横断する。 (永田)

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ダイビング用語集 「うねり」の解説

うねり

サージ。風の速度が遅くなったり、風が直接水面に当たらなくなると、波の峰が丸くなり波長が長くなる。そして波の高さ、周期、方向が一定の波となった状態をうねりという。うねりは波動エネルギーを保持しやすいため、ときに同じ状態で何千キロもの距離を進むこともある。

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サーフィン用語集 「うねり」の解説

うねり 【Swell】

波が崩れる前の、水が盛り上がって移動している状態。スウェルとも言う。台風や大きな低気圧からやってくる大きなうねりは グランドスウェルと呼ばれる。

出典 (株)デジサーフ、(株)セキノレーシングスポーツサーフィン用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内のうねりの言及

【風】より

…例えば赤道帯や北緯23゜付近では100m/s近い偏西風が吹き,南緯18゜~20゜付近では50m/s近い偏東風が吹いている。
【風浪,うねり,高潮】
 風によって起こされる波のなかで波長のあまり長くないものを風浪といい,波高の割合に波長の非常に長いものをうねりという。風浪とうねりでは波の形も異なり,風浪の波頂はとがっているが,うねりの波頂は山形にまるくなっている。…

【波浪】より

…水面波のなかで,海面,湖面などに日常みられる風浪,うねり,およびそれらが岸近くの浅海で変形した磯波を総称して波浪という。すなわち波浪は,おもに風の力が原因となって生成される周期や波長の短い水面波で,潮汐津波高潮などの波とは,周期や波長,成因などの点から区別される。…

※「うねり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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